放送大学『人間にとって貧困とは何か』 第1回「孤立」と「零落」

第1回の大事なところを書き忘れていました。

 

貧困はアイデンティティの問題として体験されます。これはこの授業における根幹となる視点ということができます。アイデンティティという概念について説明します。アイデンティティとは個人が他者との関わりの中で獲得するまとまった自己の感覚のことです。私たちは「何か」であることを求めてやまない存在です。しかも「何か」であるためにはそれを認めてくれる「誰か」を必要としています。エリクソンが心理学的概念として定着させたこの言葉は、他者への依存を免れないそうした自己「私」というもののありようを捉えたものということができます。アイデンティティは自己の提示と他者による承認によって可能になりますが、貧困は承認の取り付けを困難なものにします。こんにちにおいても組織の一員になる、家族そして地域社会の一員であるということはアイデンティティの調達を滑らかにする主要な方法ですが、貧困は組織の外部として生きる、地域社会からはよそ者として生きる、家族を維持できない、あるいは独り者として生きるということを伴いやすく、自己を承認してくれる他者を得がたくします。それゆえに自らの存在がどうにも否定的なものに思われ、自分からも認めがたいものになっていく。それが困難としての貧困の核心にあると考えています。これは貧困の心理学ではないのかと思われる人もいるかもしれませんが、それは断じて違います。一人の悩める者の悩みを社会から切り離し、個人の心の問題にしてしまう愚を犯すつもりはありません。

 

私の感想です。以前ボランテイアの研修で心理学を勉強した時、私の求めているものと違う気がした理由がなんとなくわかりました。