もっと早くスーザン・ソンタグを知っていたら

子どもの頃「おまえはこの家の癌だ」と母親によく言われていた。

一度抗議したことがあったが「ジョークのわからない奴だ。だからお前はだめなんだ」と言い返された。

実際、母は軽い調子で口にしていたから、傷つく私の方が悪いのかと思った。

あれから半世紀近くたって『高校生のための批評入門』を読み、スーザン・ソンタグを知った。

『隠喩としての病い』の「ある現象を癌と名付けるのは、暴力の行使を誘うにも等しい」という文章に打ちのめされた。

なぜ私はこの歳まで、ソンタグを知らなかったのだろう。20世紀アメリカを代表する批評家で、最高の知性と美貌を兼ね備えた、超絶かっこいい女性なのに。

ソンタグは評論集『反解釈』で「解釈とは世界に対する知性の復讐である」といっている。

今からできる限りの知性を身につけ、世界を解釈してみようと思う。